女王の教室 #1

 (ネタバレ禁止してません)
 番組開始から主役登場まで15分近くかかったとき、間延びが大嫌いな私は「もうやめようかな」と思ったんだけど、そこからの展開はそれまでの退屈感を吹き飛ばすほどすさまじいものだった。

 とにかく、阿久津先生(天海祐希)のお説教が堪らなくイイ! 学力ベースで生徒を差別していく先生に対し「不公平だ!」と反発する生徒たちに、世の中で勝ち残り幸せになれるのはごく一握り(具体的には6%、このクラスだと1名)の人間であり、残りの人間は一握りの人間を幸せにするためにあくせく働きしかもその構造に気付いていない愚民どもであると、いきなり小学生相手に理路整然と喝破してみせるという凄さ。それを聞いて「世の中、勉強だけじゃないもん」と嘯(うそぶ)く生徒には、勉強以外での勝負の方がさらにトップに立てる人間が少なく、子供の頃から英才教育を受けかつ血の滲むような努力をしているのだと一蹴してみせる。

 もちろん私は紛れも無く愚民どもの一人なのだが、阿久津先生の言葉の一つ一つは、なぜかデュランダル議長の演説を聞いているかのように耳に心地良く、甘美極まりないものだった。シャア声じゃないのに……と、よく考えると、阿久津先生役の天海祐希さんの口調は、「離婚弁護士II」の敏腕弁護士・貴子が敵をオトすときの痛快な口調そのものであり、この心地良さは作り手の狙い通りに違いなく、ちゃんと機能していると感じた。

 そして、私のように阿久津先生に感情移入しそうな視聴者に対しては、カレーこぼし事件とか、贔屓の生徒・ひかる(福田麻由子)への突然の虐待といった追い討ちをかけて、視聴者全員がちゃんと「先生酷い!」と生徒側の立場に立ってしまうように仕向けることも忘れていない。そうやって初回の終盤には、難攻不落の阿久津先生 vs クラスの生徒たち+視聴者 という明快な対立構造が完成され、エンディングテーマへ……。

 と、いきなり阿久津先生は笑顔になりスタッフと挨拶をし、黒いスーツを脱いで現実の天海祐希さんへと変身! なぜかいきなり大勢のダンサーと踊りだす! へー! まぁ本編が常に息詰まる展開だから、ここで力を抜いてくださいねってことなんだろう。面白いけどちょっと唖然。

 ここまでは阿久津先生のことしか書かなかったけれど、生徒側主役の和美ちゃん(志田未来)が、目がクリクリした丸顔のせいか、けっこう酷い目にあっているのに割とアッケラカンとした表情に見えたり、そんな彼女と腐れ縁になりそうな同級生の男子・由介(松川尚瑠輝)の古いギャグ連発・勉強捨て宣言・だけどちょっと優しいといった辺りが息抜きになったりと、本編中でもあまり深刻になり過ぎないように、キャスト選びなりキャラ設定なりがされていたと感じた。ひかる(福田麻由子)への掌返しの虐待も、単に視聴者にショックを与えるためだけでなく、彼女には既に十分すぎる学力があるから、阿久津先生は安心して(?)代表委員をやれと言い渡せたんだろう、と感じさせてくれるシーン、すなわち、ひかるの答案がほぼ全問正解なことを阿久津先生がチェックしていたシーンがあったし。初日で既に阿久津先生信者になっちゃった面長の女の子もいたっけ。彼女の運命もちょっと気になるな。きっとまともじゃないから。(笑)

 ぜんぜん期待してなかったせいもあり、割と面白く見れた。さて、次回はどうなるんでしょう。
 あ。阿久津先生は「愚民ども」という表現はしていなかったと思います。念のため。(^^;